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整形外科 肩・肘関節センター

肩を含めた上肢疾患は下半身や体幹などの障害の影響を強く受けます。
若年者によく見られる投球障害肩・肘はその代表的疾患です。その他反復性肩関節脱臼、ルースショルダーなどのスポーツによる肩関節の傷害や、中高年者の肩の痛みの原因となりやすい五十肩、腱板断裂、インピンジメント症候群、拘縮肩、変形性肩関節症に対しての専門的治療を行っています。

例えばこれらの疾患に対して、X線、MRI、CT、各種関節造影、超音波などの画像診断より、まずはリハビリテーションを中心とした保存治療を行い、症状の改善が認められない場合は関節鏡を使用した低侵襲手術治療や人工肩関節置換術など総合的に判断して行っています。

反復性肩関節脱臼について

反復性肩関節脱臼とは

いわゆる「肩がはずれた」状態のことを一般に「脱臼」と呼びますが、スポーツ時の激しい接触などにより引き起こされる肩の脱臼を「反復性肩関節脱臼」と言います。
特に若年層では一度起こるとクセになりやすいのですが、最近、何度も繰り返される脱臼も、患者さんの苦痛を低減すると言われている内視鏡下の手術で治せるようになりました。

正常肩

脱臼肩

治療について

肩関節を安定化させる組織(主に関節包や関節唇、靭帯)が脱臼時に損傷します。一度損傷すると、保存治療を行っても肩関節の脱臼を反復し、不安感を訴える場合が多いです。そのため完全に修復するには手術療法が選択されます。
手術は全て関節鏡を用いて行います。糸のついたビス(アンカー)を骨に打ち込んで損傷した関節唇・緩んだ靭帯に緊張をかけて修復します。傷の大きさは通常1cm弱×3~4ヵ所程度で手術時間は1時間半~2時間半程度となります。

術式:鏡視下関節唇修復(バンカート)術

使用しているアンカーの1例

※継続したい競技種目や骨の損傷程度により、さらに追加の処置を行うことがあります。

実際の手術風景

手術翌日の傷の状態

術式:Open Bristow法

退院後の生活と装具について

■ 更衣・入浴:退院直後から自分自身で可能となります。(正しい方法を入院中に指導します)

■ リハビリ:退院後すぐに開始します。

■ 通学:退院後すぐに許可しています。

■ 抜糸:術後10日頃に外来で行います。(※抜糸前は傷口の汚染に注意してください)

■ 装具:約3週間継続します。夜間装具は5週間(下写真参照:通常は衣服上に装着します)

■ 運転:装具が外れてから可能となります。

術後の生活と仕事・競技復帰について

■ 仕事復帰に関して 仕事はデスクワークであれば、退院後すぐに許可しております。
軽作業の場合は術後2~3か月、重労働の場合は、術後5~6か月頃から可能となる見込みです。

■ 競技復帰に関して 術後約1ヶ月でジョギングや体幹・下半身の運動を開始します。手術をした組織の修復には約3ヶ月を要するため、肩に負担のかかる競技やトレーニングの開始は術後約3ヶ月頃となります。
競技完全復帰時期はスポーツ種目や個人の回復具合により異なりますが、術後5~6ヶ月頃を目標とします。

■ 通院について 原則、術後2年間は診察を継続し、肩の状態を定期的に確認します。
リハビリも競技完全復帰まで継続的に行います。

合併症について

■ 感染:1%以下

■ 再脱臼:2~5% 再手術を行う場合があります。

■ 可動域制限:単純な脱臼制動術の場合はほとんどありませんが、複合損傷の場合は幾つかの補助手術を追加するために多少の制限があります。

■ 神経麻痺:脇の部分に頸椎から出て手に向かう神経の束が通っているため損傷の可能性があります。

■ CRPS(複合性局所疼痛症候群):外傷、手術などの侵襲がきっかけて肩から手にかけての痛みを感じる神経が異常に興奮する病気。何故発症するか今のところわかっていません。治療はペインクリニックにて神経の注射(ブロック)、投薬にて治療していきます。その際のリハビリは平行して行います。

■ 肺梗塞:下肢にもともとあった血栓が術中、術後に血流に乗って肺の血管に詰まる病気です。心筋梗塞は心臓の回りの血管に、脳梗塞は脳の血管に血栓が詰まる事をいいます。問題はあまり大きい血栓が詰まると即死してしまいます。通常は胸が苦しくなったり、ムカムカする程度です。異常時はすぐに知らせてください。

腱板断裂について

腱板とは

腱板は腕の骨(上腕骨)と肩甲骨をつなぐ板状の腱で、腕を上げたり下げたりするときに、上腕骨頭が肩甲骨の関節窩という面とずれないようにする「肩を安定させる」働きと、「肩をひねる」働きがあります。

治療について

MRI検査にて腱板断裂の有無、断裂の大きさ、筋肉の量、その他の炎症や腫瘍の有無などを確認します。
断裂のサイズや残存する筋肉の量や状態によって適切な治療方針を決定します。
MRIで腱板断裂があるからといって、全てが手術の対象になるわけではありません。
投薬や注射、リハビリなどの適切な保存療法を継続して行っても痛みや脱力などの症状が改善しない場合に手術治療が選択されます。

正常(腱板断裂なし)

小断裂像

大断裂像

手術は全て関節鏡を用いて行います。糸のついたビスを骨に打ち込んで断裂した腱板を修復させます。傷の大きさは0.5㎝~1㎝前後の傷が5~8カ所できます。
手術時間は1時間半~3時間半程度となります。

術式:鏡視下腱板修復術

手術翌日の傷の状態

小断裂の術中関節鏡写真

退院後の生活と装具について

■ 更衣・入浴:退院直後から自分自身で可能となります。(正しい方法を入院中に指導します)

■ リハビリ:手術翌日より開始し、退院後は通院リハビリ(1~2回/週)となります。

■ 抜糸:術後10日頃に外来・入院で行います。(※抜糸前は傷口の汚染に注意してください)

■ 装具:約3~4週間24時間継続します。その後2週間は夜間のみ装着します。

■ 運転:装具が外れてから自身で出来そうと感じた時から可能となります。

術後の生活と仕事・競技復帰について

■ 仕事に関して 術後約1ヶ月間はある程度の痛みを伴います。デスクワークであれば、退院後すぐに許可しておりますが、注意を要します。
軽作業から重労働の場合は、職場や社会環境により異なりますので仕事復帰の時期に関しては医師と相談してください。重い物をもてるのは術後3か月後からになります。腱板と骨とが完全にくっつくのにそれぐらいの時間を要するからです。

■ 競技復帰に関して 手術をした組織の修復には約3ヶ月を要するため、再断裂は3ヶ月以内に多いといわれています。したがって、肩に負担のかかる運動は少なくとも術後約3ヶ月以降となります。
年齢や断裂形態、筋力、競技種目、術後の回復具合により異なりますが、スポーツ復帰はおおむね6ヶ月以降が目安です。医師や理学療法士と相談して段階的に復帰を目指します。

■ 通院について 原則、術後2年間は診察を継続し、肩の状態を定期的に確認します。
退院後しばらくは1回/月で半年後から月1回をお願いします。

合併症について

■ 感染:1%以下

■ 再断裂:もともと自然に断裂する腱板です。いくら強固に縫合しても再断裂する場合があります。2年後の経過にて、小さい断裂の場合 5%、中断裂 10%、大断裂 15~25%程度の再断裂を認めます。しかし術前にあったような痛みが無く、日常生活がある程度普通にできるため再手術になることはほとんどありません。

■ 可動域制限:個々の姿勢、腱板断裂の程度により異なります。

■ 神経麻痺:脇の部分に頸椎から出て手に向かう神経の束が通っているため損傷の可能性あり。

■ CRPS(複合性局所疼痛症候群):外傷、手術などの侵襲がきっかけて肩から手にかけての痛みを感じる神経が異常に興奮する病気。何故発症するか今のところわかっていません。治療はペインクリニックにて神経の注射(ブロック)、投薬にて治療していきます。その際のリハビリは平行して行います。

■ 肺梗塞:下肢にもともとあった血栓が術中、術後に血流に乗って肺の血管に詰まる病気です。心筋梗塞は心臓の回りの血管に、脳梗塞は脳の血管に血栓が詰まる事をいいます。問題はあまり大きい血栓が詰まると即死してしまいます。通常は胸が苦しくなったり、ムカムカする程度です。異常時はすぐに知らせてください。

拘縮肩

拘縮肩とは

肩関節の袋(関節包)が硬く、小さくなる病気です。痛みを伴いどんどん硬くなって動きの制限を出します。動きの制限にはゴール(底)があり、底の時期が終わると回復してきます。

■ 炎症期 痛みが強い時(夜間痛があり何度も目が覚める状態)炎症止めの注射を関節包内にレントゲンを見ながら、もしくは診察室で行います。(糖尿病の方は注射をすると感染のリスクが上がる為診察時に相談してください。)この時期は痛みが軽減、消失しても可動域は底まで落ちていきます。動きが悪くなっても心配しないでください。必ず底に到達します。

■ 拘縮期 夜間痛は無いが、肩を使うと肩外側から肘にかけて痛みがでることがある。それにより時々夜間肩がうずくようなら肩峰下滑液包に外来診察室で注射します。夜間痛が無ければ無理な運動、リハビリを控える程度で軽減する。もしくは内服をします。 可動域の底
■ 前上げ90°以下
■ 横開き0-5°(脇を締めて手を外に開く動き)
■ 横上げ50°以下
■ 結帯 臀部~太ももの外側(帯を締める動き)
※この時期のリハビリはまだ関節包が硬いので無理せず肩甲骨周囲筋のほぐしが中心

■ 回復期 前上げが少し改善してきます。次いで横開き、もしくは結帯が改善してくると回復期に入ります。ここからリハビリを頑張ります。横上げは一番最後に回復します。改善の途中で治療を中止し、不完全な可動域を獲得したままだと、将来的に良い方の方を痛めやすくなります。

治療について

保存治療に全く反応しない場合は手術のお話をします。目安は少し動きが出てきたのにも関わらず3ヶ月しても効果が得られない場合などです。
手術は全て関節鏡を用いて行います。関節包という袋を縦方向に全周位に切離します。加えて肩峰下のスペースのクリーニングも行います。傷の大きさは通常1cm弱×3~5カ所程度です。手術時間は45分~1時間半程度です。

正常

拘縮肩

関節包切離

術後の生活と仕事・競技復帰について

術後1ヶ月は術前と比べてそれほど可動域の改善は認められません。肩周囲筋が硬くなっている為です。リハビリで筋肉が緩み始める術後1ヶ月位から徐々に改善してきます。

■ 装具 装具は基本的に必要ありません。出来る限り正しい肩の動かし方を習得してください。

■ 仕事復帰に関して 術後約1ヶ月間はある程度の痛みを伴います。デスクワークであれば、退院後すぐに許可しておりますが、注意を要します。軽作業から重労働の場合は、職場や社会環境により異なりますので仕事復帰の時期に関しては医師と相談してください。

■ 競技復帰に関して 種目によって必要な可動域が異なりますので外来時相談してください。原則、術後2年間は診察を継続し、肩の状態を定期的に確認しております。

変形性肩関節症

変形性肩関節症とは

肩関節を構成する上腕骨頭と関節の受け皿(関節窩)の表面を覆っている軟骨が破壊されている状態です。痛み、変形により動きの制限があります。夜間痛、動作時痛、安静時痛などがあります。時に関節に水が溜まります。

正常肩

変形性肩関節症

治療について

保存治療と手術治療に分かれます。保存治療の場合は、内服・注射の治療が中心です。リハビリはあまり効果がないので積極的には行いません。手術治療の場合は、人工肩関節置換術、もしくは関節鏡を用いたクリーニングを行います。

従来型

新機種(リバース人工関節)

手術は傷んだ上腕骨頭、関節の受け皿の軟骨を含んだ骨を切除します。上腕骨へは骨髄という骨の中にステムという金属を挿入してそこに代わりとなる人工の金属ヘッドを取り付けます。かんせつの受け皿にはプラスチック様の物を代わりに挿入します。新機種ではこちらは金属+スクリューにて固定されます。術後は出血した血液が溜まらないようにドレーンという管が入ります。(数日後には抜去します)
手術時間は2時間半から4時間です。

術後の生活と仕事・競技復帰について

■ 装具 2週間は基本的に装着しますが、痛みに応じて時々外してもらって大丈夫です。睡眠中は術後4週間は装着してください。また睡眠中は肘が背中側に落ちると、結果肩が前に突き上げてくる為痛みがでます。肘の下に小さい枕を入れて対応します。

■ 可動域の改善 術後6週で前方上げ140° 横開き20-40° 横上げ 140°結帯 腰を目標にしています。この時期は他人に挙げてもらっての角度です。7週目から自力で上げる練習をします。術後3か月ぐらいで先の角度まで自力で上げられるようにするのが目標です。(個人差あり)

■ 仕事復帰に関して 人工関節は金属、プラスチックなので10年から20年で摩耗などを引き起こします。あまり重たい物を繰り返し持ったり、移動させていると再手術の可能性が高くなります。そこを理解して仕事復帰してください。

■ 競技復帰に関して 種目によって出来るもの、出来ないものがありますので外来時相談してください。原則、術後は診察を継続し、肩の状態を定期的に確認しております。定期検査は1年に1回を目安。

■ 運転 装具が外れて運転に自信があれば可能です。

合併症について

■ 感染:1%以下 1度感染すると抗生剤の長期投与や手術による洗浄、インプラントの抜去などの治療を必要とします。また術後半年以内でのインプラントの緩みは感染を疑います。

■ 腱板断裂(従来型):従来型では腱板機能が破綻すると挙上が困難となります。新機種(リバース)に再置換しなければいけないケースがあります。

■ 脱臼:複数回の脱臼の場合は再手術が必要になります。

■ インプラントの緩み・摩耗:術後10年から20年で起こることがあります。

■ 可動域制限:個々の姿勢、腱板断裂の程度により異なります。

■ 神経麻痺:脇の部分に頸椎から出て手に向かう神経の束が通っているため損傷の可能性あり。

■ CRPS(複合性局所疼痛症候群):外傷、手術などの侵襲がきっかけて肩から手にかけての痛みを感じる神経が異常に興奮する病気。何故発症するか今のところわかっていません。治療はペインクリニックにて神経の注射(ブロック)、投薬にて治療していきます。その際のリハビリは平行して行います。

■ 肩甲下筋腱を固定した骨の破綻:手術中最後に行う手技で固定された骨が破綻すること。症状により再度固定しなおす場合があります。

■ 肺梗塞:下肢にもともとあった血栓が術中、術後に血流に乗って肺の血管に詰まる病気です。心筋梗塞は心臓の回りの血管に、脳梗塞は脳の血管に血栓が詰まる事をいいます。問題はあまり大きい血栓が詰まると即死してしまいます。通常は胸が苦しくなったり、ムカムカする程度です。異常時はすぐに知らせてください。

肘離断性骨軟骨炎

肘離断性骨軟骨炎とは

成長期(小学校高学年から中学生)に生じる骨と軟骨の障害で、正確には「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎」と呼ばれます。野球以外のスポーツでも肘に負担のかかる競技(体操など)で多い傾向があります。
痛みや肘の動きの制限が出た時には、障害が進行していることが多く、骨や軟骨が剥がれて関節ねずみが出来て、肘痛の原因となったり、骨・軟骨の障害範囲が大きくなると、肘関節が変形してきてしまうことがあります。

右肘正面

病変部位
上腕骨小頭の骨・軟骨が壊れてしまいます。

↓骨・軟骨が剝がれると…

剥がれた骨・軟骨が遊離体(関節ねずみ)となり、肘の痛みや曲げ伸ばし制限の原因となります。

治療について

リハビリなどの保存治療を継続して行っても痛みや可動域制限などの症状が改善しない場合に手術治療が選択されます。

【手術法は大きく3つ】
① 遊離体(関節ねずみ)摘出術
② 病変部郭清術
③ 骨軟骨柱移植術

※病変の大きさや骨年齢などを考慮して手術法を決定します。

① 肘関節内で剥がれた
骨・軟骨が悪さをする場合

遊離体(関節ねずみ)摘出術

② 病変部が小さい場合

病変部郭清術

病変部をきれいに掃除します

【術前】3D CT

【術後1年】3D CT

③ 病変部が大きい場合

骨軟骨柱移植術

1.まずは、関節鏡で手術
2.膝から骨軟骨柱を採取
3.肘の病変部位へ移植

傷の場所
肘に5mm大の傷が6か所(関節鏡での傷)肘の後側に約3cm、膝の外側に約4cmの傷ができます。

【術後3ヶ月】3D CT

退院後の生活と装具について

■ 術後は肘が腫れるため、動かしづらくなりますが、腫れが引くとともに改善して行きます。

■ 遊離体摘出術、病変部郭清術であれば、三角巾固定(数日)のみで装具などの固定はしません。

■ 抜糸は10日から2週の間に行います。抜糸までは創部の汚染に注意して下さい。

■ 更衣・入浴は退院直後から自分自身で可能となります。(正しい方法は入院中に指導します)

■ 骨軟骨柱移植術では、肘関節を直角にしてギプスシーネで2週間固定します。膝から骨軟骨を採るため、歩行が安定するまでは人により松葉杖歩行となりますが、荷重制限はありません。

■ 術後は出来るだけ早期にリハビリを開始します。リハビリでは肩周り、肘周りの筋肉の緊張をとって行きます。

競技復帰について

専門のリハビリスタッフの指示に従ってリハビリを開始していきます。
それぞれの競技に対してのリハビリプログラムを作成します。

■ 遊離体摘出術、病変部郭清術 肘の腫れと痛みが治まり、可動域が改善したら徐々にリハビリでの負荷を上げていきます。個人差もありますが、投球開始はコンディションの改善、肘伸展-5度未満などの条件をクリアしてからとなります。大体術後1~2ヶ月からキャッチボールを開始し、3~4ヶ月程度で完全復帰の予定。

■ 骨軟骨柱移植術 移植した骨軟骨が安定するまでに約3ヶ月かかります。術後3ヶ月時にCT評価で骨の癒合を確認していきます。個人差はありますが、スポーツ開始は術後3ヶ月以降と考えています。完全復帰は4~6ヶ月です。

合併症について

■ 肘の腫脹(腫れ)術後数週間

■ 膝痛、膝関節水腫(骨軟骨移植の場合)が術後1ヶ月程度

■ 神経障害(術後6週間以内にはだいたい改善する)

■ 皮下出血

■ 移植骨の脱転

修復困難な広範囲腱板断裂(リバース人工肩用)

修復困難な広範囲腱板断裂とは

肩の中で重要な腱板という筋肉が広範囲に断裂して修復が難しい状態です。痛み、変形により動きの制限があります。また、腕が麻痺のような状態で動かないことが、夜間痛、動作時痛、安静時痛を伴うこともあります。時に関節部分に水が溜まることもあります。

治療について

手術治療:人工肩関節置換術

肩全面に10cm-12cmの創ができます。傷んだ上腕骨頭、関節の受け皿の軟骨を含んだ骨を切除します。上腕骨へは骨髄という骨の中にステムという金属を挿入してそこに代わりとなる人工の金属の棒を差込み、それにはポリエチレンの受け皿をつけます。関節の受け皿には金属製の半球状のものを固定します。通常の関節の形態が反対となるため、リバース型(逆型)人工関節置換術といわれています。術後は出血した血液が溜まらないようにドレーンという管が入ります。数日後には抜去します。手術時間は状態によりますが、2時間半から4時間です。

従来型

新機種(リバース人工関節)

退院後の生活と装具について

■ 装具 2~3週間は基本的に装着しますが、痛みに応じて時々外してもらって大丈夫です。睡眠中は術後4週間は装着してください。また睡眠中は肘が背中側に落ちると、結果肩が前に突き上げてくるため痛みがでます。肘の下に小さい枕を入れて対応します。

■ リハビリ 【術後~6週間】基本的に自力ではなく他動での動きの練習 【6週~12週】軽い筋トレ+自力での動きの練習 【12週~16週】中等度の筋トレ 【16週~】自宅トレーニングのみ

他動での運動の様子

術後の生活と仕事・競技復帰について

■ 仕事復帰に関して 人工関節は金属、プラスチックなので10年から20年で摩耗などを引き起こします。あまり重たい物を繰り返し持ったり、移動させていると再手術の可能性が高くなります。そこを理解して仕事復帰してください。重量は5kgを上限としています。

■ 競技復帰に関して 種目によって出来るもの、出来ないものがありますので外来時相談してください。原則、術後は診察を継続し、肩の状態を定期的に確認しております。定期検査は1年に1回を目安。

■ 運転 装具が外れて運転に自信があれば可能です。

合併症について

■ 感染:1%以下 1度感染すると抗生剤の長期投与や手術による洗浄、インプラントの抜去などの治療を必要とします。また術後半年以内でのインプラントの緩みは感染を疑います。

■ 脱臼:2~3% 複数回の脱臼の場合は再手術が必要になります。早期脱臼は術後6週間以内が殆どです。(脱臼の形:内転+内旋+伸展=座っていてお尻の後ろに手をついて力を入れる形。手指は逆側のお尻を向く)

■ インプラントの緩み・摩耗:術後10年から20年で起こることがあります。

■ 神経麻痺:2~3%

■ CRPS(複合性局所疼痛症候群):外傷、手術などの侵襲がきっかけて肩から手にかけての痛みを感じる神経が異常に興奮する病気。何故発症するか今のところわかっていません。治療はペインクリニックにて神経の注射(ブロック)、投薬にて治療していきます。その際のリハビリは平行して行います。

■ 肩甲下筋腱を固定した骨の破綻:手術中最後に行う手技で固定された骨が破綻すること。症状により再度固定しなおす場合があります。

■ 肺梗塞:下肢にもともとあった血栓が術中、術後に血流に乗って肺の血管に詰まる病気です。心筋梗塞は心臓の回りの血管に、脳梗塞は脳の血管に血栓が詰まる事をいいます。問題はあまり大きい血栓が詰まると即死してしまいます。通常は胸が苦しくなったり、ムカムカする程度です。異常時はすぐに知らせてください。

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