挨拶
当院では患者様のからだに負担をかけない手術を提供すべく、からだにやさしい(低侵襲)手術センターを設けております。
私自身、腹腔鏡手術に携わるようになり10年が経過し浜松医大関連施設および大腸・直腸の腹腔鏡手術の修練に岩手医科大学外科学講座、大塚幸喜医師のもとに国内留学をし研鑽を積んでまいりました。
約1,500例におよぶ腹腔鏡手術に携わった経験を活かし、地域の患者様方により低侵襲でクオリティの高い医療を提供するべく頑張って参ります。
新都市病院 内視鏡外科 部長
十全記念病院 外科・内視鏡外科
上嶋 徳
腹腔鏡手術とは
腹腔鏡下手術とは、お腹に小さな孔を数カ所あけ、そこから内視鏡や、鉗子等を入れて行う手術です。創が小さく患者さんへの負担が軽いことが特徴です。
1987年にフランスで胆のう摘出術(胆石症の治療)に試みられたのが最初の腹腔鏡下手術です。日本で腹腔鏡下手術が導入されたのは1990年代で、当時は胆のう摘出術に対して行われていましたが、その後さまざまな病気の治療法として普及してきました。大腸がんでは、92年に最初の腹腔鏡下手術が行われました。
2002年には大腸がんの腹腔鏡下手術が保険診療として認められた頃より腹腔鏡下手術を実施する医療機関が増えました。大腸癌治療ガイドライン(2010年版)では腹腔鏡下手術は早期がんに対して推奨されていたものが大腸癌治療ガイドライン(2019年版)では、腹腔鏡下手術の適応は、癌の部位や進行度などの腫瘍側要因および肥満や開腹歴などの患者様側の要因だけでなく、術者の経験、技量を考慮して決定するとされています。
すなわち、腹腔鏡手術の普及拡大に伴い適応も拡大されてきております。
手術項目
胆石症、胆嚢炎に対して、開腹手術と比較し小さい傷小さいでできる手術です。術後の疼痛は軽減できますが、全ての患者さまに適応とはなりません。開腹手術を受けた方や胆嚢炎の炎症が強く周囲臓器への影響がつよい場合にはこの方法で出来ない場合があります。
虫垂炎に対する手術の一つです。近年、初回の発作であれば緊急手術を行わず抗生剤の治療によって炎症を抑えた後に待機的に行う手術として有用性が報告されてきております。入院が2回になるデメリットはありますが、炎症が消退した後の手術になりますので緊急手術の場合と比べて余分に腸を切らなければならない確率は低く、おなかの傷も小さく、入院期間も短くて済むというメリットがあります。
切除する腸の場所により傷の位置は異なりますが、開腹術と比べて小さい傷で手術可能で術後の痛みも少なく、お腹の中の傷が治る際に腸などが癒着するリスクも少なくなります。また、カメラの拡大視効果によって血管や神経などの繊細な組織がより鮮明に認識できることで細やかでかつ確実な手術が可能となります。
直腸とは肛門に近い部位の腸を示します。すなわち骨盤の内側の臓器になります。男性の場合は特に女性と比べて骨盤が小さいので手術の際に視野が狭く、手術器具の動ける範囲も限定されます。腹腔鏡下手術では開腹術と異なり直腸の周りや裏側までカメラで拡大して見ることが可能で、近くにある神経や血管をより繊細かつ確実に処理する事が出来ます。勿論、開腹術と異なりおなかの傷は小さくなり術後の痛みも軽減されます。
お腹に5mm~1cmの孔を3カ所あけて腹腔内を観察します。お腹の壁の欠損部(ヘルニア門)を確認し壁を構成する腹膜と筋肉の間に補強材(メッシュ)を挿入しお腹の壁を補強します。